MXR mini iso-brickの解析

最近アイソレートサプライが標準になってきて値段が落ち着いてきたのでMXR mini iso-brickを購入してみました。
この記事では、使った感想よりも回路側にシフトして解説していけたらと思います。

導入

購入のきっかけを説明するために現在販売されているアイソレートサプライを調査してみました。

  • Strymon Ojai系列、Zuma系列(型番は省略)
  • VITALAUDIO POWER CARRIER系列(一部ノンアイソレートあり)
  • MXR iso-brick系列
  • FIREGLOW PPS-1
  • VOODOO LAB PedalPower
  • TRUETONE 1SPOT PRO CS7

上四つは絶縁DCDCを利用したタイプで、下二つはトロイダルトランスを使用したタイプだったと記憶しています。
StrymonとVITALAUDIOはネットに内部画像があがってたのとFIREGLOWが売り切れだったのでMXRをチョイスしました。
そのほか比較的安価、一番小型である、有名ブランドの設計はどうなっているのかというのも理由の一つです。

MXR mini iso-brick

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スペックとしては

  • 9V 300mA x 4
  • 9V/18V 800mA x1

合計2Aまでの出力に対応している。
音を評価する環境がないので早速分解していきます。
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内部は基板が二段組になっています。
上側の基板にはDCDC回路及びスイッチングトランス、二次側の整流回路が載っています。
下側の基板にはリニアレギュレータと9V/18VのDCDCコンバータが載っています。

上側の基板

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上側の基板には以下に示すものが載っています。

  • プッシュプルコンバータ制御IC(ZG1810?)
  • 外部N-ch MOSFET x2(STN4260)
  • プッシュプルトランス(シルクにはEPC25記載)
  • 二次側整流回路

絶縁DCDCの回路方式としてはプッシュプル方式という方式が採用されています。
制御ICにはZG1810というものが使われています。
刻印にはDunlopが入ってるのでおそらくOEM品かと思われます。
MOSFETはSTANSONのSTN4260が使われています。
トランスを返して送られてきた矩形波を整流するために二次側には全波整流回路が出力数分載っています。

そもそもプッシュプルコンバータってなに?

プッシュプルコンバータ基本回路はこのような形です。

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トランスのセンタータップに電源電圧を印可し上下巻線を交互にスイッチングしながら動作するコンバータです。
コイル両端には2*VINが出てくるので高電圧になる場合は感電などの注意が必要です。
解説としてはEDNさんの資料TDKさんの資料がオススメです。

実機の波形を確認してみる

参考までに実機で一時側のスイッチ波形と二次側の波形をとってみました。

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計測箇所は画像に示した通りになりますが①と②は1次側GNDに対する電圧を見ており、③は巻線両端の電圧を見ています。
一時側トランスの巻線が直接はんだされてるのはちょっとびっくりですが気にしないことにしましょう。(2*VIN出てるのでちょっと怖い

次に波形を示します。

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一枚目はGNDに対する一時側の巻線両端を計測したものです。
Vinとしては18Vが入力されているのでVp-pで36V付近が出てきます。
上側と下側を交互にオンしてトランスを駆動している形です。
二枚目は二次側の巻線間を計測したもので0Vを中心にVp-pで25V付近が出ています。
この波形を全波整流するとダイオードの順方向電圧分降下して11.8Vぐらいになるというわけです。
尚スイッチング周波数は60KHz付近です。

下側の基板

少し脱線しましたが、下側の基板も見ていきましょう

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下側の基板には

  • 9Vリニアレギュレータ 78M09 x4(HTsemi製)
  • 9/18V用DCDCコンバータIC AAP6034A (SGMICRO製)

が載っています。
上側のMOSもそうですが半導体は中華デバイス主体です。
これのおかげで12000円でこのスペックを実現しているのかーとちょっと感心しました。

次に回路動作を見ていこうと思います。
上の基板から来た11.7Vはリニアレギュレータに送られて9Vを生成します。
上の基板から来た24.5VはDCDC回路に送られて9 or 18Vを出力します。

電圧の切り替えはオンボードのスライドスイッチでFB抵抗を切り替えて実現しています。
二次側回路だけ軽くとったので参考にしてください。
drive.google.com

まとめ

今回はmxr iso brick miniを解析し70%ぐらい理解した。
低背のカスタムトランスとOEM制御IC?を用いてこの大きさにまとめているのは流石MXRといったところでしょう。
機会があればFIREGLOWのアイソレート電源も解析してみたいと思う。

おまけ

LT3439を使ったプッシュプルコンバータ

今回の解析では1次側にOEMチップ?が使われていたので同じようなものを作るとき困る。
そこでLT3439を用いたものを紹介します。

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トランスさえ作れれば結構お手軽な構成ですね。

フライバック方式

複数のアイソレートOUTを小型で作るにはカスタムトランスを使うしかないのが現状です。
汎用トランスで作れそうな絶縁DCDCとしてはフライバックが有名です。
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例えばLM5180だとこのような形になります。

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ちなみにFlybackもトランス出力を増やすことで複数回路に対応できます。
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結局のところ一時側の巻線に多くの電流が流れるのでプッシュプルやハーフブリッジ、フルブリッジのような構成が向いてるのかもしれません・・・・

Strymon Ojaiの内部

https://alfalfasprout69.wixsite.com/ojai/gut-shot-picturesより引用
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Strymonはトランスを複数載せているのでフライバック?
ピン数的にプッシュプルかもしれない

VITALAUDIO VA-05の内部

Amazonレビューより引用
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VITALはMXRに似ているのでもしかしたらここがOEMで作ってるのかな?

VITALAUDIO VA-R8の内部

アスモ君より拝借(https://twitter.com/aSumoeffects/media

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